広告研究

はじまりを予感させるコピー「よろこびがあふれ出す、それがビール。」


ビールにまつわる思い出って、誰しもあるんじゃないでしょうか?酔っ払って記憶を無くした、とかではないですよ(笑)。

僕ははじめて一人暮らしをする時に、会社の先輩からビールを贈ってもらったことをよく覚えています。そのとき「あ、いま大人になりかけてる!」と思ったんです。当時、すでに20歳を超えていたので、別に飲酒することは法律上OKなわけだったんですが、なんだか自分の成長を感じたんですね。

そう感じたのは、ビールを贈るという行為に、背中を押すことや「頑張れよ」と声をかけるような意味が含まれているからだと思うんです。餞別、ですね。そんな心情と背景を描いた広告が、このキリンビールのCMです。

「ときどきビールは、応援歌になる。」そう!そうなんです!ビールって、応援歌になるんですよね。まさしく言い当てています。個人的には斜め後ろから映った親父さんの微笑み、小さくうなずいて帰る姿が、もうたまりません。親父さんの器の大きさを感じます。

もしビールが年齢制限なく誰でも飲めるものだったら、人間とこんなに深い関係性を結べなかったでしょう。お酒は20歳からという制限によって生まれた文脈を、最大限に生かしています。

「うまい!」とか「のどごし最高!」など、味を訴求する言葉ではなく、日常をていねいに切り取ってビールを描いているのが好印象です。ビールを贈る人、贈られる人の心情や機微が伝わってきます。