読書

『Weの市民革命』を読んで、コロナ禍で感じていた心の変化を言語化できた。

コロナ以降、家族や友達、職場や地域、国、さまざまなコミュニティに対して、いろんな感情を抱えるようになっていませんか?疑心暗鬼になったり、逆に愛情や信頼が深まったり…。自分の生活や生き方について、考え直す方は多いかと思います。

ですが、ゴールデンウィーク中に読んだ『Weの市民革命』という本が、そんなモヤモヤした気持ちを少し晴らせてくれました!

本書はコロナの脅威によって、国の行動が変わり、企業の行動が変わり、それによって人の「消費行動」が変化し、今まさに革命が起きていると主張しています。

特にアメリカではコロナ以前から抱えてきた人種差別の問題と相まって、それがより顕在化している様子です。著者がニューヨーク在住ということだけあり、現場の状況がひしひしと伝わってきました。率直にいうと、アメリカと日本では違うウイルスが流行しているんじゃないか、と思うくらい切迫した空気を感じました。

そんなコロナを通して見えてくる「消費行動」のあるべき姿を模索しながら、終盤では人間の本質に迫っていきます。

読了後、自分の「消費行動」について考え直すきっかけになりました。そして、コロナ禍でぼんやりと感じていた違和感や、心の変化をようやく言語化して掴まえられそうだ、と思ったので本書を通じて整理をしてみました。

経済より命が優先され、立ち止まる時間が生まれた。

コロナにより、経済が一時的に止まって不要不急の外出が制限され、自宅で過ごす時間が増えました。これにより、感染のリスクを抱えながら仕事をするエッセンシャル・ワーカー(医療、輸送や流通、小売業に従事する方)に注目が集まりましたよね。

衣食住を確保できること、安心して暮らせることは当たり前ではないと改めて実感できました。この世界でフォローすべき人、感謝すべき人が明るみになったと思います。

また、勤務先がどういう姿勢で自分と向き合っているのか、ということは強く体感できたのではないでしょうか。

従業員に対してどんな勤務形態、給与補償をしているのか、または変化しようとしているのか、それとも変わらないのか。その姿勢を従業員は、自分に向けられたメッセージとして受け取っているのは間違いありません。多くの人が自分のキャリアや生き方を考えるきっかけの一つになったと思います。

知らない間に、体温を感じない人間になっていた。

では、その逆。自分自身はコロナ以降の世界に対して、どのように向き合っているのかを考えてみました。

すると、著者が主張するように確かに「消費行動」について、自分のなかで心境の変化があったことに気づいたんです。

一番わかりやすいのはECでの購買でした。自分のワンクリックによって、配達業者が感染リスクを冒してまで運んでくれるわけです。なんだか罪悪感と嫌悪感をモヤっと感じ、ECの利用を躊躇する瞬間がありました。

情けない話ですが、自分の「消費行動」の先で人が動いていることを、コロナによって改めて認識できたんだと思います。便利で安くて早くて、まさに魔法のようなものだと錯覚していたのでしょう。利便性を追求してショートカットされた「消費行動」に慣れきったぼくは、人の体温を感知しにくい体になっていたのかもしれません…。

とはいえ、テクノロジー全てを否定する気持ちはありません。大事なのは「消費行動」の先に汗をかいている人がいること、人の息遣いを感じること。これを忘れちゃダメだと、自分に釘を刺すことができました。

自分も世界の建設に加担しているという意識。

「消費行動」の先に人がいることを意識すると、「自分は誰から物を買うのか、買うべきなのか」ということも同時に考えるようになりました。コロナの影響とサステナビリティの意識が高まる風潮によって、より社会的意義を持って活動する企業や人に対して「消費したい」、つまり「投資をしたい」と思うことが自然になりました。

コロナ以降、自分の些細な行動によって「誰かを感染させるかもしれない」という体験が世界とのつながりを強く認識させたことと同様に、自分の「消費行動」が世界に与える影響も決して小さくないと気づけました。

本書のなかで、ぼくが印象に残った一節があります。

僕ら一人ひとりは大海原に浮かぶ流木くらいの小さな存在だけれど、それぞれの小さなアクションが、世の中に大きなインパクトを引き起こしてしまうことがある。

つまり、良くも悪くも小さな行動で、世界を変える可能性があるということなんですね。

個人的にこの一節を読んだとき、大好きな小説のひとつサン=デグジュペリの『人間の土地』にあった一節と、すごく共通するなぁと思いました。

人間であるということは、自分の石をそこに据えながら、世界の建設に加担していると感じることだ。

本書のおかげで革命は他人事ではなく、自分たちで起こすものであることを強く認識できました。コロナ禍でモヤっとしていたことを言語化することもでき、自分の生き方を静かに見直すきっかけにもなった良書です。

世界と自分の関係について感度が高まっているコロナ禍の今、読むべき本だと思います。