広告研究

人間力を試される広告コピー「想像力と数百円」


新潮社でおなじみのキャンペーン「新潮文庫の100冊」にて、1984年に糸井重里さんが手がけられたコピーです。

個人的には、キャンペーンにおさまるようなコピーではないと思っています。

もはや文庫本の魅力を伝えるコピーとして、これを超えるものは存在しないと言ってもいいくらいです!現在は使われていないのですが、もったいないように思います。いま読んでもまったく枯れを感じません。

これから先も人の心に確実に残っていく、耐久年数が凄まじいコピーです。

言葉の掛け算で価値が最大化されている。

このコピーのすごいところは、言葉の組み合わせ。
組み合わせ系のコピーはいろいろありますが、これが最強だと思います。

まず、「数百円」
文庫本そのものの価格ですね。
単位として小さく、手のひらに乗るような軽さがあります。

そして、「想像力」
読書に必要な力です。
雲のようなやわらかさと軽やかさを感じる言葉です。

どちらも童心を思い起こさせる言葉ですが、掛け合わせると…

「想像力と数百円」

どうでしょう。一気に重厚感が出てきませんか?というのも、このコピーを見ていると、なんだか自分の人間力を試されているような気になるんですよね。

そう感じる理由こそ、言葉の掛け合わせにあります。どちらかが、どちらかの言葉を強調させて価値を訴求しているのではないんです。

「数百円」という言葉によって「想像力」の意味が拡張され、「想像力」という言葉によって「数百円」の意味が拡張され、「文庫本」というモノの価値と意味が、掛け合わせによって飛躍しています。

重厚な佇まいでいて、かつ雲のような軽さと余白を感じるのは、まさに言葉の組み合わせによるものなんでしょうね。哲学を感じます。文庫本の真理を表してますよね。

けっして上からではなく、「さぁ君はどの程度のもんなんだい?」って、真正面から問いかけられているような感覚です。読書意欲を掻き立てる名作コピーではないでしょうか。

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