広告研究

「結果にコミットする。」ライザップのコピーはなぜ強いか?


ライザップといえば、あのCMが印象的ですよね。一度聞くと頭にこびりつく重低音のBGM、芸能人やタレントの全身をゆっくりと回転させながらビフォーアフターを見せる演出…。

ダイエット商材って「ラクして痩せる」みたいな、まるで魔法のような効果を期待させて売っているのがほとんどです。それでもダイエット商材が廃れないのは、やっぱり人は夢を見てしまうからなのでしょう(笑)。そんななか、ライザップは当たり前の現実を突きつけました。

「運動をする、食事制限をする。これで痩せます!」

いやそんなもん、わかってるわい!!

と、ツッコミたくなるド正論をストレートに言ってて、もう身も蓋もない(笑)。だけど、あのCMによってチャーミングさというか、よしちょっと頑張ってみようか、と思えるというか。ダイエットの現実的な厳しさとか科学的根拠はいったん横に置いといて、受け手側を素直な状態にさせた広告だったのではないかと思います。

そしてぼくは「結果にコミットする。」というコピーも、そのダイエットのド正論を素直に受け取ってもらうのに重要な役割を果たしていたと思うのです。

結果にコミットする。

2015年 健康コーポレーション 中村直史

さて、この言葉の意味を正しく説明できる人って、どれくらいいるんでしょうか?

なんとな〜くですが、あの映像とセットでこの言葉が目に飛び込むと、パッと見「ダイエットを成功させます!」と保証している印象で、受け取る人がほとんどだと思います。「コミットする!」って、なんとな〜くそんなイメージですよね。

では、「コミット」とは何なのか?

普通に英語でcommit(コミット)を調べると、委託する、約束する、引き受ける、といった意味であることがわかります。

また、コミットするという言葉はビジネス用語としても使われていますよね。例えば、「このプロジェクトにコミットしていきます!」とか「売上達成にコミットします」とか、そういう感じですね。ライザップのCM以降、認知が広まって使う人も増えたような気もします。

つまり、コミットとは「目標や目的に対して責任を持って引き受ける、積極的に関わる」という意味なんですね。

…で、ライザップにおいて求められる結果=ダイエットですから、「結果にコミットする。」というのは「ダイエットに(対して)、責任を持って引き受ける」という意味になります。

……どうでしょう、なんか表現としてすごくフワッとしてませんか(笑)?

正論をチャーミングに見せる仕掛け?

実はこれ、よく考えると決してダイエットの成功を保証しているコピーではないんですよね。でも、なぜか受け手としてはダイエットの成功が約束されたような印象になる。この「コミットする」という言葉に、冒頭で述べたダイエット商材でよくある〝魔法〟のような、夢を見させてくれるような雰囲気が醸し出されているとぼくは思うのです。

「運動をする、食事制限をする。これで痩せます!」というド正論をかましておいて、「必ずダイエットを成功させますよ!」みたいなことを決め台詞にするとストレート過ぎる。感覚的になりますが、言葉の強弱でいうと〝強〟なんです。もう現実的すぎる。

でも、このコピーの意味(あくまで推測ですが)としては、トレーナーのお客さんに対するスタンス、向き合い方でしかない。責任を持って引き受けますよ、という意思表示に過ぎない。つまり、そんなに特別なことは言ってないんです。むしろジムとして当たり前のこと。つまり強弱でいえば、〝弱〟の言葉なんです。これで全体のバランスを取ってるんじゃないのかなと。

このように、CMの演出はもちろんですが「結果にコミットする。」という言葉も、ド正論をチャーミングに見せた非常に重要なコピーであったと、ぼくは読み取っています。