広告研究

絵本の価値を見直した広告。「読み聞かせ。寝たら、成功。寝なかったら、大成功。」


絵本で寝かしつけるのって、大人の都合があるように思うのはぼくだけでしょうか(笑)?

子供を寝かしつけるための道具として絵本ってよく挙がりますけど、本来の目的としては少しズレてますよね。絵本に対して失礼というか。寝てしまうということは、退屈でつまんない内容だとも言えるわけで。

面白ければワクワクするし、興奮して続きがもっと読みたくなるはず。寝かしつける機能だけではなく、絵本そのものの魅力を伝えつつ、親子の微笑ましい情景を描いているのがこのコピーです。

読み聞かせ。寝たら、成功。寝なかったら、大成功。

2019年 日本マクドナルド 絵本のハッピーセット 堀井 沙也佳


引用元:2019年度 TCC 新人賞

親にとって、読み聞かせは子供が寝なかったら失敗、という受け取り方にどうしてもなると思います。それがまさしく、大人の都合だとぼくは思うんですね。

このコピーでは「寝なかったら、大成功」と言っている。子供は寝ずに楽しんでくれているわけですから、親子のコミュニケーションとしては確かに大成功なはずです。このコピーは、もう一度ちゃんと絵本を通じて生まれる親子のコミュニケーションの価値を捉えて、読み手に気づかせてくれます。

そして、この広告においては寝かしつけとしての価値だけではなく、絵本そのものの価値を訴求することが本来のミッションです。

親子の情景を伝えると同時に、ちゃんと絵本(=ハッピーセット)が面白いことも示唆し、訴求しているのが優れている点かと思います。広告の本分もしっかり機能しているんですよね。

俳句のようなテンポの良いリズム感と、成功から大成功へとステップしていく裏切りが気持ちいいコピーです。