広告研究

「ロケットも、文房具から生まれた。」従業員も勇気づけた広告コピー。


私事ですが、実家が文房具屋をやっております。それに加えて自分自身、いまだに手帳でスケジュール管理したり、電子書籍になれなかったり、アナログな人間です。そんなこともあってか、このコピーには非常に惹かれました。

2006年、文房具メーカーの「トンボ鉛筆」の企業広告のコピーです。

企業の存在価値を定義し、従業員を勇気づけたコピー

現在、2021年ではデジタルとアナログのバランスがうまく取れているなぁと、個人的に思います。

文房具を所有すること、文房具だから感じられる温度が価値になっていますよね。デジタル社会が浸透しきった今だからこそ、手触り感のある文房具の魅力は際立っています。

でも、このコピーが誕生した2006年頃は様子がかなり違いました。わかりやすくいえば、翌年の2017年にようやく日本で初代iPhoneが発売されたような時代です。まだまだガラケーを使ってた人も多かったんじゃないですかね。

つまりこの時代って、いよいよデジタル社会に突入してくぞ!って空気感が漂い始めた時なんです。もう、アナログ時代は終わり。紙やペンなんて、どんどん化石みたいになっていく。そんな予感がしていました。

そうなると、文房具メーカーとしてはこれからどういうポジションでやっていくのか、不安だったと思います。まさに逆境です。

そこで誕生したのがこのコピー。

ロケットも、文房具から生まれた。

商品の販売促進のためのコピーではない。企業として、世の中にどんな価値を提供できるのか?それが体現されたコピーです。ロマンがありますね。

このコピーのもう一つ素晴らしいポイントは「トンボ鉛筆」の従業員も、自分たちの存在価値に気づけること。外側に向けたメッセージだけでなく、内側の従業員やその家族、関係者を勇気づけるコピーでもあるんです。

最近はスタートアップの企業が増えてきたり、新しいサービスが生まれる時代でもあります。加えて、企業が社会に対してどんな態度なのか、ということも問われる時代にもなりました。なので、こういった企業の存在価値、生まれてきた意味を定義する「パーパス・ブランディング」が結構、増えてきているように思います。価値がモノからコト、コトからイミへ変わってきた証拠ですね。

今の時代だと普通のことのようですが、2006年当時でいえば、かなり先駆けていたのではないでしょうか。

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