ジェンダー問題が叫ばれる昨今から考えると、速攻で炎上しそうなコピーですね(笑)。それでも、昭和の時代にこの広告コピーが与えた影響(特に男性)は大きかったんだろうな、と思わせるコピーです。
現代では表現としてNGかもしれませんが、学べるところはあります。
「音」として気持ちがいい!
「男は黙って」の後、別にどんなビールがきてもええやん!
…って思いがちなんですけど、実際に入れてみるとしっくりきません。
男は黙ってキリンビール
男は黙ってアサヒビール
男は黙ってサントリープレミアムモルツ
どうでしょうか?
「音」として、すらすら〜っと、流れてしまう気がするのです。
それに対して、
男は黙ってサッポロビール
どっしりと構えた印象を与えます。
そう感じる理由ですが…
まず「サッポロ」の「サッ」が促音。そして「ポ」が半濁音です。これらは破裂音で、コピーが跳ねていくようなリズム作りに役立っていると思うんですね。
かつ、「黙って」と「サッポロ」の最初の文字の母音がどちらも「a」です。
黙(だま)=a サッ(さ)=a
母音が揃っていることも「黙って」から「サッポロビール」という言葉へのつながりをテンポよくさせている要因だと思います。これによって、コピー全体に心地よさが生まれている気がします。
そう考えると「男は黙って」という言葉は「サッポロビール」のためにあると言ってもいいのかもしれません。「サッポロビール」という言葉が単なる商品名としてではなく、広告コピーの一部として機能していますよね。
「憧れ」や「生き方」を提示している
映画やドラマで、俳優さんがタバコを吸っているのをみて憧れを抱いたことないですかね?もはや、この感覚が令和以降ないかもしれません…。それに似たような心のくすぐり方が、このコピーにはあると思うんです。
つまり、商品を売ることではなく、生活スタイルや男らしさを描いた、ということです。
そして「黙って」という言葉に、昭和の男らしさが象徴されているのも重要なポイントです。
「背中で語る」「一家の大黒柱」
こういった当時の男性のかっこよさが「黙る」という言葉で直感的に連想された時代だったのでしょう。そこに「サッポロビール」が組み合わさったことで男らしい生き方のなかに自然と、いやむしろ、最初からそうだったかのように「サッポロビール」を強い関係にすることができたのだと思います。
こうしてコピーを見つめていると、広告が時代を作っていること、その時代の空気感をまとっていることがよくわかりますね。実際、令和時代のビールの広告では男女や世代の垣根を超えて、みんなで楽しむ飲み物として描かれるようになってきました。
ちなみに僕は、実はコーラ飲みたいけど、付き合いでとりあえず黙ってビール派です(笑)。
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