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「エンディングまで、泣くんじゃない。」強弱が絶妙なMOTHERの名コピー。

当時コピーライターだった糸井重里さんがシナリオを担当し、任天堂から発売されたファミリーコンピュータ用のRPG「MOTHER」(マザー)。

ドラクエやFFとは違い、等身大の少年少女が主役の物語は他のRPGとは異色を放った作風で、発売から30年以上たった今でも語られる偉大なRPGです。

そんなRPGのキャッチコピーを制作されたのは、糸井さん自身かと思いきや、一倉宏さん。糸井さんに頼まれたということもあってか、大量のコピーを考えて提案されたといいます。そのなかから糸井さんが選んだ1本が「エンディングまで、泣くんじゃない。」だったのです。

「泣くんじゃない」がグッとくる。

次元は違いますが、このコピー「家に帰るまでが、遠足やで!」と親や先生から注意されている感覚と似ていませんか?

少年少女に最後まで背筋をピンと立たせるように促すコピーで、とても好きな作品です。

また、このコピーはRPGとしてのワクワク感や期待感もちゃんと放っています。それは、エンディングまで泣くのを我慢しなきゃいけない、つまり、エンディングまでに泣きたくなるような出来事がいくつもあることが暗に示されているんです

何よりグッとくるのは、「泣くんじゃない」という言い回し。まるで、玄関からこどもを送り出す親の「優しさ」とか「厳しさ」を感じます

「泣くな」だと、強すぎるし、
「泣いたらだめだよ」だと弱すぎる。

ほんの小さな言い回しで、感情のカタチがまったく違いますよね。愛情を感じるあったかいコピーです。