広告研究

「地図に残る仕事。」子供たちが憧れ、求職者が増えた広告コピー。


建設や土木の仕事って、朝早くから働いて泥まみれになって、クタクタになって家に帰り、夜は酒を飲んで寝る!…みたいなイメージが浮かばないでしょうか。ゆえに〝キツイ・汚い・危険〟という印象が強い業界でもあります。

災害の多い日本にとって、本来建設は大きな産業であり経済を支えてきた誇れる仕事であるはず。でも、やっぱりツラさのイメージが先行してしまいがちです。そんな建設業の魅力を引き出したコピーがこちら!

地図に残る仕事。

1992年 大成建設 安藤寛志

90年代当時、人材確保の点では大手ゼネコンのなかで清水建設が大きくリードしていたといいます。糸井重里さんのコピー、忌野清志郎さんを起用したCMソングが要因だったようです。そんななか大成建設は大きな予算もなく、新聞でできるだけ効果的なキャンペーンを展開したい、という要望があったといいます。そこで生まれたのが「地図に残る仕事。」だったのです。

全国各地の地方新聞の広告で展開されたこのキャンペーン。あるダム工事現場の所長さんが取材中にふと口にした言葉がコピーのもとになったそうです。このコピーから力強いプライドみたいなものを感じるのは、建設業に関わる方の生のお声から誕生したことが起因しているかもしれませんね。

結果、このコピーによって建設業に憧れる人が増え、求人効果もアップしたそうです。広告によって印象を180度、変えることができたんですね。たった8文字の言葉で将来の担い手を増やすことができるなんて、言葉の力って本当にすごいです。

地図に残ることの価値を考える。

ぼく個人としては、制作物が「人の心に残る」ことを求めてしまう性格なんですが、それでも「地図に残る」と言われると偉大さを感じ憧れます。つまり、地図ってそれだけ特別なものってことですよね。

少し考えてみたんですが、地図には確実性があるからなのかなと。

心に残るって、不確実でかつ瞬間的なものだったりするんですよね。でも、地図は確実に残る。

それに、なんか公式に認められた感じもある。かつ、建設物を通して得られる体験は次世代にもちゃんと引き継がれていくから、継続性もあるんですよね。

そして、地図=世界ともいえる。

そう考えると、建設することは世界を作る仕事ともいえる。そこになんとなくロマンを感じるから、偉大さを感じ憧れるのかもしれません。

ぼくも何か〝残る〟仕事をしたいです。