広告研究

「打球は、ラジオの方がよく飛ぶ。」音声メディアの魅力が伝わるコピー。


clubhouseやTwitterのSpacesなどの音声SNS、オーディオブックに音楽配信サービス…音声コンテンツがどんどん普及していますよね。でも、音声メディアの元祖といえば〝ラジオ〟でしょう!

なんでしょうね。あのこっそりと会話を聞かせてもらっているかのような、それでいて自分に話しかけてもらっているような感覚。

小さな音を拾う〝耳〟の機能に、秘密や非公開といった文脈があるからこそ、親和性が高くて没頭しやすいんでしょうね。

耳からの情報は状況把握能力や想像力を高めるのに重要とも言われているので、耳を介しておこなわれる音声コンテンツは、まさにコミュニケーションを深めるのにうってつけの媒体なんですね。イヤホンがワイヤレスになったことで、それが一気に手軽になりました。人間の機能を拡張させてしまってる。ほんまにすごい、ワイヤレスイヤホン。

さて、そんな音声コンテンツの元祖でもある〝ラジオ〟の素晴らしさをスカッと鮮やかに表現しているのがこのコピーです。

打球は、ラジオの方がよく飛ぶ。

2003年 RKB毎日放送 門田 陽

今にも実況と歓声が聞こえてきますね。

「打ったーー!!大きい!大きい!大きい!………入ったぁああ!!」ってやつですね。

実際に飛んでる距離は同じなのに、同じじゃないという矛盾が起こっちゃうコピーです。理屈じゃなくて、人間の本能的な部分で理解できるのがすごく気持ちいいし、憧れる表現です。

実は初めてこのコピーを目にしたのは、宣伝会議主催のコピージアムという歴代の有名な広告コピーが展示されるイベントでした。

当時、宣伝会議賞に応募をし始めた頃で、一次通過すらできてなくて悔しかったときですね。

「ちゃんと足を運ぶことで、学べることがあるはずだ」と思って、わざわざ雨の日に大阪まで出かけて見に行きました。

そしてその後、宣伝会議賞で初めて一次通過をするのでした。やっぱり、現場に行くのは大事ということですね。ネットで調べればいくらでも見れるコピーなので、インプットするという事実は同じなんですが、質が違うんでしょうね。そこへ足を運んだことで、宣伝会議賞に取り組む集中力に影響があったんだと思います。

あれ…?紹介しているコピーが訴求している価値と、真逆の余談になってますね(笑)。(現場に行く価値vs 現場に行かない価値)

いやでもこのコピー、そういう意味では真逆の状況を価値に変えて、強みにしてますよね。

「スポーツ観戦は生のほうが迫力がある!」というのが一般論だと思いますが、そんななかで、ラジオならではの「耳でしか味わえない迫力と高揚感」をしっかり提供しています。そして、言われた方も否定しきれないコピーだと思います。

事実、ラジオにはそのパワーがあると、ぼくは実感しています。

ぼくの祖父は晩年、脳梗塞で右半身麻痺になってしまったのですが、祖父の枕元にはいつもラジオが置いてあったんです。そのラジオからは、祖父が大好きな阪神タイガース戦の実況がよく聞こえていました。実況アナウンスの熱狂とともに、祖父が高揚していた姿が今でも脳裏に浮かびます。

たくさん歴代コピーがあるなかでこれが印象に残ったのは、もしかしたらそれが理由だったかもしれません。大好きなコピーです。